タンペレ美術館ムーミン谷コレクション
ムーミン美術館は、トーベ・ヤンソンが寄贈したタンペレ美術館ムーミン谷コレクションが展示作品の礎となっています。
トーベ・ヤンソンとパートナーでありグラフィックアーティストのトゥーリッキ・ピエティラがタンペレ美術館に一回目の寄贈を行ったのは1986年のこと。そのコレクションは1009点の作品と38点の立体作品を有し、その中には、タンペレ美術館で開催された「ムーミン」展で展示されたムーミン本、トーベ・ヤンソンが描いた挿絵の原画やスケッチが含まれていました。立体作品の制作者は、ヤンソンとトゥーリッキ・ピエティラ、そして二人の友人で医師であったペンッティ・エイストラで、これらはムーミンをテーマにしたミニチュア模型になっています。コレクションには、トーベ・ヤンソンのムーミン以外の作品やアーティファクトも含まれていました。ヤンソンとピエティラは、後日何度かに分けてさらに寄贈をしています。現在、タンペレ美術館ムーミン谷コレクションには、1930年代から1990年代までに制作された約2000点の作品が含まれています。
ムーミンに特化した美術館、タンペレ美術館ムーミン谷がオープンしたのは1987年、場所はタンペレ中央図書館(通称Metso)の地階でした。この場所では2013年まで開館。2013〜2016年にはタンペレ美術館地階に移動。タンペレ美術館ムーミン谷、としての美術館は2016年10月末に閉館。そして、2017年6月、場所をタンペレホールに移し、美術館名をムーミン美術館と改名して再オープンしました。なお、コレクション名に変更はなく、今もタンペレ美術館ムーミン谷コレクションとしています。
2013-2016
ムーミン谷コレクションの中で、最も重要な作品群は、トーベ・ヤンソン自身が1945〜77年の間に執筆し、挿絵を描いたムーミン本の挿絵原画です。これらの挿絵原画はほとんどが紙や厚紙にペンとインクで描かれています。他には、紙にガッシュまたは水彩で描かれた作品が約50点、スクラッチ技法で描かれたもの10点、インクウォッシュ技法、またはインクウォッシュ技法とペンで描かれたもの数点など。また、それぞれの原画サイズは小さく、出版された本に掲載された挿絵とほぼ同じ大きさのものがほとんどです。
コレクションの興味深い点は、ムーミン本の挿絵として実際用いられたものの原画の他に、そのスケッチや別バージョン、未公開バージョンが含まれていることでしょう。これらのスケッチや同じ場面を描いたいくつかのバージョンを見比べることで、トーベ・ヤンソンの挿絵芸術の進展の経路を調べることができます。
トーベ・ヤンソンのコミックスのためのドローイングやコミックス本の表紙絵、コミックスのためのスケッチなど、コミックス関連作品は207点。これには、1947年にフィンランドのスウェーデン語系文化雑誌『Ny tid』に掲載された初のムーミン・コミックスの原画も含まれています。トーベ・ヤンソンが雑誌用に描いたイラストや表紙絵は500点におよび、うちほとんどが風刺雑誌『ガルム』に掲載されたイラストです。
コレクションにはムーミン作品の他にも、トーベ・ヤンソンが本の挿絵として描いた作品が約200点あります。これらには、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』、J・R・R・トールキンの『ホビットの冒険』といった古典的児童書のための挿絵が含まれています。
コレクションには挿絵原画とともに、初代ムーミンやしき、5階建てのムーミン屋敷、ソルサプイスト公園に設置されているムーミントロールのブロンズ像など、41点の立体作品も含まれています。立体作品は主にトゥーリッキ・ピエティラが制作、中にはヤンソンとピエティラの友人で医師のペンッティ・エイストラが制作者に名を連ねているものもあります。ヤンソン自身の言葉によれば、ヤンソンは助手として立体作品の制作に参加していた、とのこと。
細ごまコレクション
後日コレクションに追加されたものの中で、最も注目すべきは、1993年に寄贈された61箱のParaphernalia(パラフェルナリア)コレクションです。「パラフェルナリア」という名称は、ヤンソンとピエティラが、スウェーデン・アカデミー用語集の中から見つけた言葉で、「もの」という意味です。パラフェルナリアは、細ごまとした「もの」のコレクションで、立体作品には使われなかったムーミンキャラクター像、立体作品の素材、写真、スライドや往復書簡などが含まれています。既存のムーミン谷コレクションを補完するものとして、大変貴重な「もの」たちです。